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通販・EC業界の市場動向

通販・EC業界の転職求人、市場動向、転職活動の進め方について

最初に、通販・EC業界の市場規模を大まかに把握してみましょう。

ただ、ここまで見てきたように、現在、従来の紙のカタログやテレビ・ラジオを媒体としていた通販会社がもれなくEC・ネット通販に参入しているため、通販・EC業界、またその周辺の通販支援会社まで含めると、全体像を正確に把握するのは容易ではありません。そこで、いくつかの公表されている調査から、部分ごとに見ていくことにします。

まずは、公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)が2016年8月に発表した、「2015年度 通販市場売上高調査」を見てみます。やや古いデータですが、通販・ECを行う主な企業400社以上が正会員社として入会している協会のデータですので、概要を把握するには適したデータです。

この調査によると、2015年度1年間の通販の売上高は6.5兆円、マイナス成長を記録した1998年度以来ずっと増加傾向が続いているということです。市場拡大の要因として、ECプラットフォーム系企業の参入、店舗系ネット通販、BtoB通販の躍進、通販支援会社・サービスの充実などあると分析されています。

また、ECに関しては、経済産業省による「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」に詳細なデータがあります。

資料にある「BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率」によれば、2016年のBtoC-EC、すなわち個人消費者向けのEC市場は、全体で15.1兆円にも上ります。そのうちおよそ半分を、一般に「通販」といわれてイメージするような「物販系分野」が占めており、8兆円を超える市場規模となっています。

「サービス系分野」とは、モノ以外のものを販売するECのことです。例えば、旅行や宿泊、チケット、保険などがこの分野に含まれています。市場規模は2016年で5.3兆円を超える規模に上ります。

「デジタル系分野」とは、リアルなモノではなく、かといってサービスでもなく「デジタルな商品」を販売するECのことです。例えば、電子書籍やデジタル音楽・動画配信、オンラインゲームなどがこの分野に含まれています。市場規模は1.8兆円近くに上ります。

BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率

通販・EC業界カテゴリ別

「通販」というと、一般的に個人の買い物が頭に浮かぶかもしれませんが、企業を顧客とするBtoBのEC、あるいはネットオークションやリユース関連のCtoCもECには含まれます。ここからは、「BtoC」「BtoB」「CtoC」の各市場についてまとめます。また、「売る主体・買う主体がBかCか」という切り口とは異なりますが、近年注目を集めており、成長も著しい「越境EC」の動向についても見ていきましょう。

BtoC

前出の、経済産業省による「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の中にある「BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移」のグラフを見てみます。

これによると、市場規模・EC化率は年々高まっており、年を追うごとにその“成長率”の数字も高まっています。

ちなみに「EC化率」は、全体ではなく「物販系分野」のみに限定した数字です。この調査における「EC化率」とは、「全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合」を指します。つまり、従来の紙などによる通販がEC化した率ではなく、電話やFAXでの受発注のほか、実店舗での流通なども含めた全ての商取引のうちEC化されている率ということになります。

BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移

出典)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場が15兆円を突破。中国向け越境EC市場も1兆円を突破~(METI/経済産業省)

次に、BtoC ECの今後の予測です。

EC化率が今後どこまで伸びるかについては、各商品カテゴリのECニーズの高さや、物流面のコスト・利便性などにも左右されるため一概にはいえないものの、ECそのものがまだ成長の余地が大きく、全体としてはさらにEC化率は高まっていくでしょう。

野村総合研究所が2015年11月に出した「2021年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」のリリースの中で、BtoC-ECの市場規模は2021年には25.6兆円(2016年の1.7倍近く)に達すると予測されています。

国内B2C EC市場規模予測

BtoB

BtoBのECとは、基本的には企業間の電子商取引ということです。前出の経済産業省による調査では、「狭義のBtoB」「広義のBtoB」という分類がされており、狭義のBtoB ECを「インターネット技術を用いたコンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの」、広義のBtoB ECを「コンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの」と定義しています。

分かりにくいですが、違いは「インターネット技術を用いたネットワーク」に限定しているか否か。

「広義の」といった場合は、例えば銀行間のネットワークなどインターネット以外の専用のネットワークを通じた電子商取引を含みます。「EC」には違いありませんが、一般的な「通販」のイメージとは異なります。

「狭義の」という場合は、インターネットを媒体とした商取引に限られます。イメージとしては、オフィス用品の通販を行っているアスクルや、工具通販のMonotaROなどから、工業部品・生産材を販売するミスミなども狭義のBtoB ECと思ってよいでしょう。

2016年の「狭義のBtoB EC」に絞って見たとしても、市場規模は204兆円に達しています。BtoBだけあって、ものによっては単価が高く、取引量も多いため市場規模では桁違いです。中でも伸びが堅調だった業種は「輸送用機械」「鉄・非鉄金属」だったと分析されていますが、そこまでいくと一般的な「通販・EC業界」とはちょっとまた違うイメージですね。ただ、「EC」という視点では、BtoBの市場はこれだけ大きなモノだということは、認識しておいてよいでしょう。

BtoB-EC市場規模の推移

CtoC(リユース市場)

CtoCのECとは、ネット上のプラットフォームを使って個人間で取引をすることです。古くは、地域の新聞や雑誌で「売ります・買います」の掲示が行われていましたが、インターネットの登場以降、個人間の売買ニーズのマッチングが格段に容易になりました。さらに、ヤフオクなどのネットオークションが個人間取引を行う層を広げました。

さらに近年は、シェアリングエコノミーの登場によって、遊休資産をお金に換える動きが広がっています。その一貫としてメルカリのようなフリマ(フリーマーケット)アプリが台頭し、ネットを介して自分が使っていないものを別の個人に売る「リユース市場」を拡大しています。

前出の経済産業省の調査では、2016年のネットオークションの市場規模は約1.1兆円(企業による出品も含む)、CtoCの市場規模は3,458億円と推計しています。

越境EC

越境ECとは、国境を越える国際的なECのことで、海外の消費者に向けて物を売る形態です。世界的にもECの市場は急速に拡大しており、市場規模では中国と米国が突出しています。eMarketerの国別のBtoC EC市場規模は、中国が9,276億USドルで世界1位、米国が3983.5億USドルで2位となっています。米国が前年比16%の成長であるのに対して、中国の前年比は40%となっており、とりわけ中国のEC市場が急速に成長しているといってよいでしょう。

前出の経済産業省の調査では、日本・中国・米国の3カ国を対象に調査をしており、2016年に中国の消費者が日本からECで購入した額が1兆366億円、米国が日本からECで購入した額は6,156億円としています。

日本の通販・EC会社も中国のEC市場に目を付けており、数年前から中国向けのサイトを立ち上げたり、現地の会社と提携するなどの動きを見せています。

通販・EC業界の沿革と今後

日本における通販の歴史を、インターネットの登場前後、スマートフォン登場以降、そして今後に分けて紐解きます。

ネット以前

日本で行われた最初の通販事業は、明治時代にまでさかのぼります。1976年(明治9年)に農学者の津田仙が、雑誌を媒体に植物の種を販売したのが日本における最初の通販とされています。

でも、通販が一つの業界として確立したのは、第二次大戦後。1960年代にカタログでの通販を行う会社が出てきました。当初はリンガフォンやワールドファミリーなどの外資がレコードを販売し注目を集めました。また日本の会社も、主に漫画や一般の雑誌の広告を通じて通信販売を開始。その頃、通販で売られる商品は、楽器や健康器具・美容器具などが特徴的でした。

1970年代に入って、テレビ・ラジオでの通販が開始。いまでいうインフォマーシャルの走りのような生活情報番組もこの頃に始まりました。また、1974年に『ディノス』、1975『ニッセン』、1976年に『ベルメゾン』と、カタログ誌が続々創刊したのもこの頃でした。やや遅れて、1982年には『通販生活』も創刊します。

1990年代には、通信販売専門チャンネルがスタート。1996年に「ショップチャンネル」、2001年に「QVCジャパン」が放送を開始し、注目を集めました。ジャパネットたかたがテレビ通販を始めたのも90年代です。

ネット以後

1990年代半ばにWindows95が発売され、それ以降、徐々にインターネットが隆盛していきます。1990年代終盤から2000年にかけての第一次インターネットバブルといわれる頃、1996年に「楽天市場」がスタート。1999年には「Yahoo!ショッピング」がサービスを開始しました。

そして、2000年11月に、Amazonが書籍を販売するECサイトとして日本への上陸を果たします。その翌年には、Amazonは「Amazonマーケットプレイス」を開始し、通販・ECを行う会社のプラットフォーム化が始まりました。

2000年代前半にブロードバンド化が進んだことによって、インターネットへの常時接続が普及、2004年頃には日本のインターネットユーザーは人口の約半分6000万人を超えたといわれています。インターネットユーザーの増加に伴って、ECサイトやそれを利用する人も徐々に増えていきました。

また、個人のブログや、SNSが注目され始めたのも2000年代前半です。mixiがローンチしたのは2004年の2月でした。この頃から、アフィリエイト広告という新しいチャネルが急速に広まっていくことになります。

スマートフォン時代

2000年代中頃には、スマートフォンが登場します。日本でスマートフォンが普及する契機となったのは、アップルのiPhoneでしょう。2007年に発表されたiPhoneが日本で販売を開始したのは2008年のこと。そこから急速にスマートフォンが普及し、2015年には4000万台を超えました。

人が何か物を買う時の行動として、まず「ネットで検索する」ことが最初の行動になっていきます。これによって、さまざまな業種で、検索連動型広告を中心とするSEMへの投資が増えました。

TwitterやFacebookなどのSNSの普及が加速したことも後押しして、スマートフォンを使ってECサイトで買い物をするという行動が一気に拡大。紙のカタログやテレビ、実店舗で商品を見て、でも買うのはECサイトから、という流れも定着しつつあり、ECプラットフォームのみならず、ECサイトを運営する会社も、サイトのスマホ対応や専用アプリの開発、ECサイトへの導線強化に力を入れるようになりました。

今後の見通し

ECでの買い物利用が増えることによって、購買行動に関するさまざまなデータが取れるようになります。実店舗での小売りでは、何を見てお店に来て、どのように商品を買われたかを定量的に把握するのは難しかったですが、ECでは、何を見てそのサイトに来たのかや、リピート率・リピートまでの期間など、いろいろなデータを集まります。それらを分析して商品開発や広告に活かすことが当たり前になっていくでしょう。それができる人材が求められ始めているほか、データ分析・データ活用をサポートするサービスを提供する通販支援会社も出てきています。

CtoCによる売買が、今後もまだ増加を続けることが予想されます。Yahoo!オークション(ヤフオク)やメルカリがこれらの市場のシェアを大きく占めていますが、今後、新たなプレーヤーが参入してくるのか、従来のBtoCの通販・ECにどのような影響を及ぼすのかは未知数です。

ここから言えるのは、従来の「売り手」と「買い手」がはっきり分かれていた時代から、誰もが「売り手」にも「買い手」にもなる時代に移り変わっているということ。その意味では、InstagramなどのSNSを使ったインフルエンサーマーケティングがもっと盛んになる可能性はあります。テレビに出ているような著名人ではなく、SNS上のコミュニティで影響力のある個人が物を売る上で重要な役割を担うということです。

もう一つ、大きな可能性を持つテーマとして越境ECが挙げられます。言語や国ごとの法律の違いなどでハードルが高かった越境ECですが、それら課題を解決するサービスが少しずつ出てきており、参入するプレーヤーも増えていくことでしょう。少子高齢化で内需が縮小していくこれからの国内市場から、海外へとターゲットを移すのは自然なことであり、今後の日本経済を支える一つの柱になる可能性も秘めています。

通販・EC業界のホットワード

オムニチャネル

オムニ(Omni)とは「全て」という意味を持つ接頭辞です。オムニチャネルとは、実店舗やイベント、PC・モバイルなどのチャネルを問わず、考えられる「全て」のチャネルで買い物ができるように流通経路をつなげることをいいます。

例えば、顧客がネットで買った物を実店舗で受け取れるようにして、その際の「ついで」の買い物を促進したり、逆に実店舗はショールーム的な位置づけにしてそこで商品を見てもらい、実際の購入はネットで済ませられるようにする。そのようなことを可能にする流通とバックヤードの仕組みをつくろうということです。

O2O

オムニチャネルに近い考え方として、O2Oという言葉を最近見聞きします。O2Oとは、「Online to Offline」を略した表現。ネットからネット外(オフライン)の行動、例えば実店舗への来店などを促す施策やマーケティングの考え方のことです。「オムニチャネル」は、On/Off含めさまざまなチャネル同士の間を顧客が行き来する考え方ですが、そのうちの一つがO2Oの考え方だと言えます。

越境EC

越境ECとは、国境をまたぐECのことです。クロスボーダーECなどと呼ばれることもあります。日本の通販・EC会社では、主に「日本から海外へ売る」流れを想定してこの言葉が使われることがほとんどでしょう。

ECサイトを英語・中国語ほか多言語化して言語の壁を乗り越えることはもちろん必要ですが、ターゲットとする国の法律の理解、対象エリアの物流確保、決済方法なども対応が必要になります。また、売り上げ規模が大きくなれば、カスタマーサポートの体制づくりも必要になってきます。これらさまざまなハードルを、現地に拠点を設けたり、現地企業と提携を結ぶことで解決する企業もあります。

ID決済

ID決済とは、ECサイトとは別のWebサービスなどに登録したアカウントのID・パスワードを使ってECサイトにログインすることで、Webサービスにあらかじめ登録してあるクレジットカードなどで決済する仕組みのことです。

ECサイトでモノを買おうとした時に、名前や住所、クレジットカード情報などを入力するのはユーザーにとって手間であり、そこで離脱してしまう(買い物をやめてしまう)可能性も高くなります。ID決済を導入することで、離脱率を下げる効果が期待できます。

「Amazonペイメンツ」「楽天ID決済」「Yahoo!ウォレット」などのECプラットフォーム最大手が提供するID決済の仕組みや、決済に特化したPaypalなどが多く使われています。

サブスクリプションコマース

サブスクリプションコマースとは、毎月定額の料金を支払うことで、ECサイトが選んだ商品が送られてくる販売方法のことです。「定期購入型」などともいわれますが、毎月違う商品が届くという点で、一般にイメージされる「定期購入」とは少し異なります。

ユーザーからすると何が送られてくるか分からないのに毎月定額の料金を払うわけですが、商品を選ぶ手間を省けたり、自分では選びそうにない商品に出会えるといったメリットがあります。例えるなら、お寿司屋さんで「おまかせ」を注文するようなものでしょうか。

日本ではまだあまり浸透していませんが、テモナが「たまごサブスクリプション」というサブスクリプションコマースのシステムやコンサルティングを、ECサイトに提供し始めており、商品ラインアップがある程度豊富で、かつ商品の入れ替え頻度が高いECサイトでは導入が進む可能性があります。

コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングとは、顧客にとって読むだけで価値のある情報(=コンテンツ)をサイト上で提供することで、顧客と関係を構築し、ゆくゆくはモノを買ってもらうことを目的とするマーケティング手法のことです。いわゆる「宣伝っぽい」情報、商品のメリットなどを直接的に訴求するのではなく、顧客に役立つ情報を提供することで、商品や会社のファンになってもらうことに主眼を置きます。

例えば、健康食品を販売するECサイトで、「ジョギングを長く続けるコツ」「健康的なダイエット法」のような、商品とは直接関係ないけれども、健康食品を買いそうな人が興味を持ちそうなコンテンツを提供するというようなやり方です。すぐに購入に結びつくことを期待するというよりは、中長期的にわたって底を上げるマーケティング手法と言えるでしょう。

SNSマーケティング

TwitterやFacebook、Instagram、LINEなどのSNSを活用するマーケティング手法のことです。各アカウントに企業のアカウントを作って無料の範囲で運用したり、これらのSNSに広告を出すこともSNSマーケティングの一環だと言えます。

個人のSNSユーザーと直接コミュニケーションを図ることで、企業や商品のファンになってもらい、ゆくゆくは商品を購入してもらうことを目的とします。コンテンツマーケティングと似ている部分もありますが、どちらかというと「コミュニケーション」に重きを置くイメージです。シャープやタニタのTwitterアカウントを思い浮かべてもらうと分かりやすいでしょう。

SNS上で、自社の商品についての苦情を言っていたり、うまく使えていない人を見つけたら、直接声をかけてサポートする「アクティブサポート」などもSNSマーケティングの手法の一つです。

運用効率化・自動化(物流・カスタマーサービスなど)

本来、ECサイト自体が、実店舗の運営に比べて、かなり効率化・自動化されているといっていいでしょう。24時間・365日注文を受け付けられますし、物理的な売場を持たなくてもいい、販売スタッフも少なくて済みます。

それでも、ECサイトを運営していく上では、仕入・在庫管理、マーケティング、受注管理、発送、カスタマーサービスなどの各プロセスで、効率化してコストダウンできる余地はまだまだあります。

例えば、自社で持っているECサイトにプラスして、Amazonや楽天などにも出品・出店しているとそれぞれに在庫データを持たせるのは非効率です。どのチャネルから受注しても一元管理された在庫データベースに紐付いていれば、チャネル間での在庫の移動をしなくてすみます。また、受注データと顧客データを紐付けてシステム管理することで、カスタマーサポートが電話を受けた顧客が過去に何を注文したかが瞬時に見られるようになり、サポート時間の短縮につなげたり、さらなる受注につなげたりすることができるでしょう。

このように、EC運営のバックヤードをサポートするツール・システムにより、誰でも効率よくECサイトを運営できる環境が整いつつあります。