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通販・EC業界の転職マーケットを知る

通販・EC業界の転職求人、市場動向、転職活動の進め方について

通信販売(通販)自体の歴史は古く、日本で通販業界として確立したのは1960年代頃といわれます。2000年以降、インターネットの発達・普及とともに、ECの形態による通販が発展を遂げています。

ECとは、エレクトロニック・コマース(electronic commerce)の略で、日本語では「電子商取引」と訳されます。かつての通販は、新聞・雑誌の広告やカタログ、テレビ・ラジオなどのアナログな媒体を通じて物やサービスを販売していましたが、それに対して、インターネットを通じて行う通販のことを、一般的にECと呼んでいます。つまり、ECは通販を行うための媒体の一つだといえます。

近年ではスマートフォンやタブレット端末などのデバイスが普及し、生まれた時からインターネットが身の回りにあるデジタルネイティブが育ってきたこともあって、さらにECが身近かつ普遍的なものとなっています。

通販・EC業界にはどんな企業がある?

通販は、小売業の一つに位置づけられます。ただし、通常の小売と違って基本的に実店舗は持ちません。店舗に商品を並べて売るのではなく、メディアを通じて商品・サービスの情報を消費者に届け、それを見た消費者が電話やFAX、インターネットなどの通信手段で注文を受け付けるのが通販です。

通販ビジネスの黎明期は、メーカーが自社の製品を通販で直接販売しようとしたり、流通・小売業を営む会社が実店舗以外に新たに販売チャネルを設けようとして通販に進出するケースが主でした。しかし、紙媒体、テレビ・ラジオ、インターネット、それぞれの利用者が増えるにつれて、通販専門の流通会社や、通販で売ることを前提としたメーカーが現れました。また、それら通販業を、媒体制作や受注管理、顧客管理、物流、人材獲得などの面からサポートするさまざまな通販支援会社も登場してきています。

そうした通販・EC業界のプレーヤーを、業態別に見てみましょう。

メーカー系

商品を自社で製造し、卸さずに直接、通販・ECで販売する業態です。もともと一般の流通に乗せいていた商品を同時に通販でも販売しはじめるというケースもあれば、製造〜実店舗での販売までを一貫して自社で行っている企業が通販・ECに手を広げるケースもあります。

また、実店舗で販売せず、通販でのみ販売する通販専門商品を製造するメーカー、その商品だけで成り立っている企業もあります。そのような会社は、自社で制作するカタログやECサイトだけでなく、複数の通販会社を通じて、紙のカタログ、通販番組、通販サイトに商品を展開することが多いです。

メーカー系の会社が取り扱う商品のカテゴリは多岐にわたりますが、アパレル、健康食品、化粧品などの日用消費財、家具・雑貨、PCなどが売り上げ規模では上位に名を連ねます。通販に注力する具体的な企業として、アパレルならファーストリテイリング(ユニクロ)、ワールド、化粧品ではオルビス、ファンケル、ディーエイチシー、家具・雑貨ではニトリ、PCではデル、マウスコンピューターなどが挙げられます。

流通系

リアル店舗を持つ流通・小売企業が、通販・ECにもチャネルを広げるケースです。百貨店・総合スーパー(GMS)のほか、家電量販店・ドラッグストアなどの専門店系がECに参入しています。

百貨店・総合スーパー(GMS)ではイトーヨーカ堂、マルイ、家電量販店ではヨドバシカメラ、上新電機、ドラッグストアではマツモトキヨシなどが通販売り上げで上位にランクインしています。

中でも、ヨドバシカメラは本来、実店舗で売っていたもの以外、書籍(電子書籍含む)や食品などにも商品ラインアップを広げ、東京23区を中心に独自配送の体制づくりにも力を入れており、ネット販売実績ではアマゾンに次いで2位の売り上げを上げています。

カタログ通販・テレビ通販系

インターネットが一般に普及する以前から、紙のカタログやテレビなどを通じて通販を行ってきた企業です。従来の通販で培ったマーチャンダイジング機能と物流システムをそのままネット時代に活かして、自然な形でECにも参入しています。

代表的な企業は、紙のカタログ通販系では、千趣会、ディノス・セシール、ニッセン、ベルーナなどのほか、BtoBを中心とするアスクルなどがカタログ通販系に位置づけられます。また、テレビ通販系ではジャパネットたかた、ジュピターショップチャンネル、QVCジャパンなどもECを並行で行っています。

ECプラットフォーム系

インターネットが一般に普及して以降、インターネットを通じて売ること、すなわちECを前提として通販・EC事業に参入してきた比較的新しい会社たちがあります。

その最たるものが、Amazonでしょう。当初は「ネット書店」という位置づけでしたが、しだいに取り扱う商材を広げていきました。いまやECの売上高はほかのECサイトを大きく引き離し、押しも押されぬトップ企業となっています。

そのほか、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイや、爽快ドラッグとケンコーコムが合併してできたRakuten Directなども、新しい通販・EC企業に位置づけられるでしょう。

また、ダイエット・ボディメイク事業で知られるRIZAPは、ヘルスケア、アパレル、メディア、エンターテインメント企業などを対象に次々とM&Aを行い通販事業に参入しています。

数年前まではソーシャルゲームの会社として知られたCROOZも、今や通販・ECに軸足を移し、ファッション通販をメイン事業にして業界でのシェアを高めています。

通販支援系

このほかに、その会社自身が通販・ECを行うわけではなく、通販・ECをさまざまな面から支援する「通販支援会社」と呼ばれる企業が多数出てきています。

まず大きなところでは、マーケットプレイスを提供する会社。ECモールを運営する楽天やYahoo!ショッピングが代表的です。Amazonも自社で仕入れて販売する以外に通販事業者が出品できるマーケットプレイス機能を兼ね備えており、多数の法人・個人の販売事業者に利用されています。

また、通販・EC会社が自ら簡単にECサイトを構築できるEC会社向けのネットショップ構築サービスも数多くあります。代表的なものは、BASE、STORES.jp、EC-CUBE、テモナなどです。顧客がアクセスするショップが作れるだけでなく、決済サービスや顧客管理、受注管理から物流との連携など、ネットショップの裏側に必要な機能を総合的に提供しているのが特徴です。

そのほかにも、通販・EC会社向けに、広告・マーケティング、CRM、在庫管理など個別の業務支援機能をサービスとして提供する会社や、通販・ECを運営する人材の獲得を支援する会社など、さまざまな「通販支援会社」が存在します。

通販・EC業界の将来性は?

こうして見てきたように、従来型の流通・小売企業も、紙のカタログやテレビを通じて通販を行ってきた会社もECにチャネルを広げ、メーカー自身もECを使った直販に乗り出すという状況です。そこへさらに、EC専門の新たな通販企業や、通販支援会社が続々と参入しています。商品をつくって売る、この一連の流れにおけるEC化が進行中だということです。

カタログ通販最大手の千趣会は、紙のカタログの発行部数を2016年度の7580万部から、この先5年で約5分の1の1500万部程度にまで減らし、ECに注力すると発表しました。これは千趣会に限った話ではなく、通販業界全体におけるECの比率が高まり、今後ますますECの伸びが業界の成長をドライブする傾向が強まると考えられ、まだまだ伸びしろの大きな業界だと言えるでしょう。

通販・EC業界の主な職種と求められる人材像

伸び盛りの通販・EC業界では、どの職種でも全般的に人材ニーズは高いですが、その中でも相対的に採用熱が高い職種の仕事内容と、求められる人材像・経験・スキルについて見ていきましょう。

マーケティング

メーカーや通販・EC会社において、商品をより多く売るために、出品先となるマーケットプレイスを選定したり、広告・プロモーションを主に行う職種です。ミッションは大きく「新規顧客の獲得」と「リピート・定期購入の促進」に分けられますが、規模の小さい会社では一人で両方を担当することも。

「新規顧客の獲得」においては、市場調査・分析、認知向上・販売促進のためのリスティング、アフィリエイト広告プロモーションやSEO・SEMの戦略立案から実施まで、「リピート・定期購入の促進」においては既存顧客のCRM・ダイレクトマーケティング戦略の立案から実施が主な役割となります。いずれの場合もKPIの目標に向けて、実際に施策を打ちながら、どのチャネルを使うのがよいか、何を訴求するとより売れるのか、といった検証をしながら数値を改善していける能力が求められます。

クリエイティブ

通販・ECを行う上では、さまざまな制作物が必要になってきます。紙媒体のDM、チラシ、パンフレット、カタログや、自社Webサイト・LP、ショッピングサイトに出品する際の商品写真や広告用バナー、SEOのためのオウンドメディアコンテンツなどです。マーケティング担当者の立てた戦略・方針に則って、それらの制作、具体的にはコピーライティングや画像作成などをする職種です。

通販・ECにおけるクリエイティブは、ブランドメッセージの訴求というようなものよりも、そのクリエイティブによって「どれだけ多く売れるか」が勝負です。マーケティング担当者と協力しながら、コピー・画像など多数パターンを制作し、A/Bテストを通じて少しでも多く売れるクリエイティブを目指していける能力が必要です。

ECサイト運営

ECサイト運営の職種は、いわばネットショップの「店長」といった位置づけのポジションです。自社で行うEC全体の管理者であり、ECによる売り上げの最大化を担う責任者でもあります。ECサイト運営にまつわる各担当者の人事から、自社ECサイトのコンテンツ企画、マーケティング企画、CRM・顧客対応から、物流管理、在庫管理などバックヤードまで、業務範囲は多岐にわたります。

規模の小さな会社の場合は、ECサイト運営担当者が自らサイト制作を行ったり、専任のマーケティング職やクリエイティブ職と同等のことを任せられるケースもあります。関係者に対して適切にディレクションしなければいけないため、ECビジネスについて幅広く熟知している人が求められます。

商品企画

メーカーにおける商品企画と、他社の商品を仕入れて販売する通販・EC会社における商品企画では、業務内容が少し異なります。メーカーにおける商品企画は、自社の新商品を企画・開発したり、既存の商品を改善したりする仕事です。通販・EC会社における商品企画は、マーチャンダイジング(MD)、バイイングが主な仕事になります。

いずれの場合も、市場調査や既存顧客分析を通して顕在化したニーズを先取ったり、潜在的なニーズを掘り起こして、ニーズに合った商品を企画することが求められます。これまでの通販業界では、市場にアンテナを張って直感的にニーズを察知できる能力に重きを置かれてきましたが、ECでは多様な顧客データを取得できるため、それらデータを活用してニーズを汲み取る能力が求められるようになっていくでしょう。

コールセンター

通販・ECにおけるコールセンター業務は、ほとんどの場合アウトソーシングされています。コールセンターの機能は大きく分けて2つあります。1つは、顧客からの問い合わせや注文を受け付けるインバウンドの機能です。プロモーション計画に応じて増減する業務量に合わせてコールセンターの席数を確保したり、より商品を売れるようなマニュアルやトークスクリプトをつくるといった仕事です。もう1つは既存顧客とのCRMでリピートや定期購入を促進するアウトバウンドの機能です。

コールセンター業務を請け負う会社におけるスーパーバイザー(SV)や、ECを行うメーカーや通販・EC会社におけるコールセンター担当といったポジションに人材ニーズがあります。

その他の職種

ここまでご紹介してきた職種は、ECを行っているメーカーや通販・EC会社として、商品を売る立場の会社における職種です。

先にも述べたように、急成長する通販・EC業界においてはさまざまな通販支援会社も増えています。これに合わせて、そうした通販支援会社のサービスを通販・ECを行う会社に提案する法人営業のニーズも高くなっています。

通販・EC業界の転職に有利な資格は?

通販・ECに関連する資格としては、一般社団法人通販エキスパート協会が運営する「通販エキスパート検定」というものがあります。2010年から検定が実施されており、「1級マネジメント編」「準1級CRM編」「準1級法律編」「準1級ECマーケティング編」「2級」「3級」に分かれて受検するようになっています。

実際のところ、この資格を取得していれば転職に有利というわけではありませんが、通販・ECのビジネスや業務についての基礎知識を網羅的に学ぶには適しているといえるでしょう。通販・EC業界以外に活かせるマーケティングやCRMの知識も身につくので、興味のある方は調べてみるとよいでしょう。

通販・EC業界の転職マーケット動向

通販・EC業界はここ十数年での成長が著しく、この先の将来性も見込めます。この業界に的を絞ってキャリアを築いていくことは、1つの選択肢として有効だと言えるでしょう。ここでは、中途採用の求人案件から、通販・EC業界の転職マーケット動向を読み解きます。

転職先業種

「化粧品通販」「テレビ通販」「健康食品通販」「通販(EC)支援会社」がそれぞれ20%で、ここまでで全体の80%を占めます。残りの20%を、「アパレル通販」「ネット事業会社」で各10%ずつ分け合う形です。

問われる学歴

求められる最終学歴は、専門学校卒が70%、高卒が20%、大卒が10%という割合です。歴史ある大手メーカーも子会社をつくるなどして通販・ECビジネスに次々と参入していますが、通常の中途採用なら大卒以上が条件となるような企業でも、比較的歴史の浅い通販・ECの領域では経験者・専門家を採用しにくいため学歴要件はさほど問題にならないことが多いようです。

年収帯

転職時の年収で見ると、「350万〜400万円」が30%、「400万〜500万円」が40%で、ここまでで全体の70%を占めます。残りの30%は、「500万〜600万円」「600万〜700万円」「800万〜900万円」が各10%となっています。

通販・EC業界におけるキャリアパス

通販・EC業界の成長速度に対して、業界への人材流入が追いついていないというのが今の状況です。そのため、異業界からでも、近しい経験をしている人は比較的参入しやすい環境にあります。そして一度、通販・EC業界に入ると「経験者」になるので、業界内でステップアップして行きやすいといえます。ここで、通販・EC業界内での典型的なキャリアパスを紹介します。

パターン1:同じカテゴリの商材を扱う会社に転職

「健康食品→健康食品」「化粧品→化粧品」のように、同じカテゴリの商材を扱う通販・EC会社で、より売り上げ規模の大きい会社に転職するケースは多く見られます。商品企画やマーケティング担当者は特に、身につけた商品知識や市場感を買われ、転職先から好待遇で迎えられる可能性が高くなります。

パターン2:扱う商材を変える転職

「化粧品→アパレル」「健康食品→日用品・雑貨」などのように、商材をガラッと変える転職も、通販・EC業界内では多く見られます。この場合に、転職先の会社が評価するのは、「定量的・定性的なデータをもとにPDCAサイクルを回して、収益を改善した経験」です。

パターン3:受注側から発注側へ

「通販・ECを専門的に扱う広告代理店→通販・EC会社」「ECサイト制作会社→通販・EC会社」といったような、受注側から発注側への転職を希望する方は少なくありません。通販・ECは、一般的な小売業とも違いますし、通常のWebサイト運営とも異なる知見が必要になります。その点、通販支援会社の側にいて通販・ECについて一定の知識を持つ人は、それ以外の業界の人よりも採用されやすいと言えます。